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東京高等裁判所 平成元年(ラ)480号 決定 1989年9月14日

抗告人 須藤忠則

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は、原決定を取り消し、抗告人に東京地方裁判所昭和五九年(ケ)第五四五号不動産競売事件記録全部の閲覧謄写を許すことを同裁判所書記官に命ずる、との決定を求めた。抗告の理由は、別紙抗告理由書記載のとおりである。

そこで検討するに、民事執行法一七条によれば、執行裁判所の行う民事執行について利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し事件の記録の閲覧謄写を請求することができるものとされているが、右利害関係人の代理人が右請求をする場合については、この種事件においてはとかくいわゆる競売ブローカーの暗躍により手続の迅速公正が害されがちであることからすると、代理人となりうる者の範囲や代理権の証明方法について合理的な限定を加え、競売ブローカーが利害関係人の代理人を装つて関与する余地を封ずることが許されるものというべきである。そして、このような見地から、代理人による閲覧謄写をさせるにあたつては、委任状の提出のみならず、更に代理人と本人との間に一定の関係が存することを証するのに適切な文書の提出を求めることも是認されるべきである(民事執行法一三条一項の規定による代理人の許可の場合に関する同規則九条参照)。本件記録によれば、抗告人は本件競売における買受人たる株式会社住建ハウジングの代理人として右競売事件記録の閲覧謄写を請求している者であり、抗告人が提出した委任状には、抗告人が前記買受人の取締役である旨の記載があるが、上述したところからすると、このような場合、更に商業登記簿の謄本等によりこの点を証明することを求め、これに応じない者に閲覧謄写を拒否するのは、執行裁判所の書記官として相当な措置であるといわなければならない。

そうすると、抗告人と利害関係人本人との関係を証する文書の提出がないことを理由として抗告人の閲覧謄写請求を拒否した書記官の処分に対する異議申立を却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がない。よつて、本件抗告を棄却する

(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 加茂紀久男 新城雅夫)

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